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 心の中に刻まれて忘れられない本というのがあるとしたら「朝の少女」かも知れない。難しい言葉はひとつもない。簡単で誰でも読めるから幼稚園の子どもにだって読み聞かせることができる。

 でも、この本は簡単だけど、とてもとても深い。

 人間として本来あるべき姿を感じさせてくれる。それは、とっても単純なことなのに、いま生きている私たちには難しいことなのかも知れない。ふんわりと優しく包まれるような温かなお話なのに、ぽろぽろ涙がこぼれてくる。そうやって何度も何度も読むうちに、いつしか、ぼろぼろになってしまいました。

文庫 灰谷 健次郎 新潮社 1996/12 ¥540
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 ネタばれしないように感想を書くのはとても難しいことで、何となく本を読んで感じたこと考えたことを本の内容とは関係なく書き連ねております。

 この小説の登場人物たちに共感してしまう自分というものが、どこか危うい存在に思えてなりません。恋愛というものの価値観を揺さぶられてしまいますね。

 それならいっそ恋なんてしない方が良いのかもしれない。真剣に愛したりすることが、恋人や夫(または妻)の重荷になってしまうのだとしたら・・・心のバランスを保つのはとても難しいことだと思います。
 
 例えば嫉妬。この感情は本当に恋人たちの心を冷やしてしまう。誰にも束縛されない、誰も束縛しない生き方が良いのでしょうか。いろいろ考えさせられる一冊です。

単行本 江國 香織 幻冬舎 2004/03 ¥1,470

目下の恋人

2006年9月20日 読書
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 1998年から2001年にかけて雑誌に掲載された8編に、書き下ろしの2編を加えた辻仁成さんの初の短編集。どの作品にも辻仁成さんという人物を感じさせるものがあった。そこには「恋とは何か、愛とは何か」という答えの見つからない問いを求め続ける姿が浮かび上がってくる。

 本の帯にも書いてあるけれど「一瞬が永遠になるものが恋、永遠が一瞬になるものが愛」この言葉には妙に納得するものがある。そういう意味で、もし理想の恋というものが存在するとしたら、この本のタイトルになっている「目下の恋人」なのかも知れない。

文庫 辻 仁成 光文社
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 石田衣良さんの作品を読むのは2冊目。「池袋ウエストゲートパーク」の鮮烈な印象を残したまま手に取った「うつくしい子ども」から石田衣良という作家の深さを、まざまざと感じた気がした。

 クスノキの大樹の下に集う子どもたちは美しかった。蝉が蛹から羽化するような(きっと、その時は生まれ変わるのに痛みをともなうと思うから)そんな青い季節の只中で生きている子どもたちの美しさを描いたように思う。

 この小説はある少年犯罪と類似しているので社会的な問題を突きつけている部分もあり、どの世代の人が読んでも深く考えさせられる内容になっている。

文庫 石田 衣良 文藝春秋 2001/12 ¥500
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 2005年国内で一番売れたSFは小川一水の「老ヴォールの惑星」でした。思えばSFが大好きだったのは中高校生の頃で、それ以降は、あまり読んでいなかったこともあるし、この本が凄いらしいという噂を耳にしても「ふうん、そうなんだ」と思う程度だった。

 読み終わって正直「しまった」と思った。ハンマーで頭をガツンと殴られたようだった。この本には短編4作が収録されている。

「ギャルナフカの迷宮」極限の世界で人間はどう行動するのか試されているような作品。「老ヴォールの惑星」2003年SFマガジン読者賞受賞作品。「幸せになる箱庭」オンラインゲームが好きな私には考えさせられるものがあった。「漂った男」悲劇的な状況でどう人が生きていくのかが描かれている。

 4作の中で特に「老ヴォールの惑星」は常人の想像の域を超えたところにあり、読み終わった後は言葉がみつからなかった。感動という言葉を突き抜けてしまって、しばらく心臓の鼓動がどくどくと胸を打っていた。

 解説でノンフィクション・ライターの松浦晋也さんは、小川作品の入門のために「復活の地」を薦めているので、ぜひ読んでみたいと思っている。

小川 一水 早川書房 2005/08/09 ¥756
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 随分、軽い書き方だなって最近の江國さんの小説を読むたびにそう思う。でも何でこんなにリアリティがあるんだろう。まるで自分で体験したかのような、そんな感じ。
 東京に住んでいた頃、わたしは東京タワーにのぼろうなんて考えたこともなかった。この小説の中でも遠くから、いろいろな東京タワーの姿が見えている。東京という街の、そこに生きる人々の象徴のように、今日も東京タワーは誰かの視界の中ですっくりとそびえているに違いない。
 読み終えて感じたことは恋は人を幸せにするのだろうかってこと。人間って何だか哀しい生き物だなって、そんな風に感じた。もし、この小説のような恋が本当にあるのだとしたら。

ISBN:410133921X 文庫 江國 香織 新潮社 2006/02 ¥620
 歴史を学ぶ上で最も大切なことは、過去から何を学ぶかであると思う。塩野七生は常にそのことを心にかけながら歴史を紐解いているのが素晴らしい。

 この本の「ひとまずの結び」の中で・・・

「古代のローマ人が後世の人々に遺した真の遺産とは、広大な帝国でもなく、二千年経ってもまだ立っている遺産でもなく、宗教が異なろうと人種や肌の色が違おうと同化してしまった、彼らの解放性ではなかったか。
 それなのにわれわれ現代人は、あれから二千年が経っていながら、宗教的には非寛容であり、統治能力よりも統治理念に拘泥し、他民族や他人種を排斥しつづけるのをやめようとしない」

 と記している。感銘を受けた深い言葉である。

文庫 塩野 七生 新潮社 2002/05 ¥460
 ポリス国家、アテネとスパルタは純血主義だった。片親が他国人であったり先祖に他国人の血が流れていたり、本国以外で生まれた人には、市民権・参政権・裁判等の権利は許されず、私有財産を持つことはできない。また自由民であっても市民権を得ることはできない。
 ローマは戦争で敵国に勝っても、敗戦国を征服して植民地とするのではなく、引き続き統治権を認め、ローマへ移住する人には市民権・参政権を積極的に与えた。私有財産も認めている。他の民族を認めるためには宗教を認めなければならない。塩野七生は、キリスト教観ではローマの多神教を理解することはできないと言う。ローマの場合は「システムとしての多神教」が機能したと言えるのかも知れない。

文庫 塩野 七生 新潮社 2002/05 ¥420
 「余分なこと、無駄なこと、役にたたないこと。そういうものばかりでできている小説が書きたかった」

 江國香織さんは後書きでこう書いています。思えば、日々は余分なもののかたまりだのようなもので、江國香織さんの本は、いつもどこにでもあるような日常が描かれています。もしかしたら、彼女の本が好きだと言う人は本の登場人物に自分自身を重ねて見ているのかもしれませんね。事実、私はその一人だったりします。今まで、言いたかったけど言葉に出来なかったことが、たくさんあるのだなということに気づかせてくれる一冊です。例えば、女友達と言うのは、この世で一番ややこしい存在かも知れません。分かっているようで、分からない。険悪になったり、和やかになったり。そしてこれ以上ない程親密になることは出来るけど、やはり互いに尊重すべきテリトリーを持っていなければならない。
「これだから友情と言う概念は分からない」と作中で中野さんが言っているように、他人には理解しがたい何かを持っている、それが友情なのかもしれませんね。

文庫 江國 香織 新潮社 1998/02 ¥500

落下する夕方

2006年3月1日 読書
 江國香織さんの小説は細部できらきらと輝く彩りがあります。この作品にもやっぱり魅力的な細部が揃っていて、それらはどれもごく当たり前の物だったり、出来事だったりします。そう、普通に日常にありふれているものばかりです。そんな様々な細部が作品に現実感を与えています。江國香織さんはそういう他愛のない物事に明かりをあてるのがとても上手です。あるインタビューで「優しいのであればそれを優しいという言葉で表現するのではなくて、別の言葉で書きたいじゃないですか。そうするとやり方として説得力が出るんです。そう、見せたいんです、優しさだったら優しさを」と答えているけれど、そういうスタンスで書かれている文章はやっぱり読んでいて惹かれるものがあります。

文庫 江國 香織 角川書店 1999/06 ¥560

容疑者Xの献身

2006年2月27日 読書
 直木賞を受賞して、いま話題の本です。ネタバレしないように本の感想を書くって難しいですが・・・この本の印象をいくつか書きたいと思います。

 何だか物語の中にひきこまれて、すらすら読めてしまいました。300ページ以上あって結構長い本なのに、長さを感じないほどで、これだけ集中して読めた本は久しぶりかも知れません。最近「博士の愛した数式」を読んだせいか、数学の世界に素直に共感できました。こういう世界を、さらりと書ける東野さんは凄いと思います。
 そして、トリックよりも、なぜそんな事をしたのか?という「動機」に衝撃を受けました。見返りを求めない、ただひたすら愛することだけを考えて・・・ミステリとしても楽しめ、純愛小説でもある作品。

「私の考え得る最大の純愛、最高のトリック」だという著者自身の言葉に裏切られることのない一冊です。

ISBN:4163238603 単行本 東野 圭吾 文藝春秋 2005/08/25 ¥1,680
 この本を読んだのは中学の三年の時のことだった。図書室でかりた本だったのだけど(微かな記憶をたどってみると)手にした時にすでに古びた感じだったので、今、こうして文庫で出版されていることが、不思議な感じがする。永遠のヒューマンドキュメンタリーなのかも知れない。
 副題にある通り、ローラはフライパンで焼かれてしまった。確か、泣き声がうるさい、そういって両親は1歳のローラをフライパンで焼いた。一命をとりとめた幼子は知的障害児として施設に送られるが、他者への恐怖と絶望から言葉を発することができなかった。12歳のローラが臨床精神科医の著者とめぐりあったとき、運命は新たなる道を辿りはじめた。
 この本を読んだ頃、わたしは家庭内の殺伐とした雰囲気と父親の暴力に心を痛めていた。わたしは中学を卒業すると家を出ることになるのだけれど、案外、この本がきっかけになったのかなと思う。人間の愛と再生と感動の物語だった。

ISBN:4062564114 文庫 関口 英男 講談社 2000/02 ¥819
 この本の帯に担当編集者のコメントがあって(こんなの↓)

いままで本を読んで泣いたことは、一度もありませんでした。でも、この作品を読んで、はじめて涙をこぼしました。その涙は「哀しいから」とか「切ないから」とか「美しすぎる世界を描いているから」とか、どんなことばでも到底追いつけない、そんな涙でした。もし、ひとが一生のなかでつける「幸せのため息」の回数が決まっているのだとしたら、そのうちのいくつかは、確実にこの作品のなかでついてしまった、といまは深く強く思います。最終章。ぜひ、耳を澄ませて読んでみてください。きっとあなたの耳に、ある美しいひとつの曲が、強く、やさしく立ち上がってくるはずです。

 わたしは何故だか泣けなかった。確かに感動はしたし、西加奈子さんは本当に才能のある人だなと、しみじみ感じたけれど、心の中に違和感が残った。多分、わたしの中で家族の存在があったかい温もりのあるものでは、ないからだと思う。普通の人が家族に抱く当たり前の感情が欠落しているのかも知れないな。多分。だから、ごく普通に育った人が読めば泣けるのだろうなと思う。そういう人は、もう、それだけで幸せな人なんだろうな。

 ところで、今年は50冊を読破する目標をたてているのだけれど「さくら」で5冊目になりました。最近は読んだ本のことぐらいしか書いていませんが〔HOME〕では、わりと頻繁に更新していますので、よろしかったら一度、遊びに来て下さいね。

西 加奈子 小学館 2005/02 ¥1,470

天使と悪魔(下)

2006年1月30日 読書
 翻訳本というのは、翻訳者の感性が大きく作用するように思う。
 あるブログで「ダン・ブラウンの作品は芸術的でない」という意見もあった。この点に関しては多少の疑問がある。例えば、ハリーポッターのシリーズに関して言うと、翻訳者の力量が大きく関与していると思う。確かに名訳だ。別に越前 敏弥さんの訳が悪いという訳ではない。簡潔で読みやすい文章だと思うが、芸術的な表現に長けているとも言い難い。もちろん原文を読んだことがないので、あくまで想像なのだけど。
 苦労して訳して下さる方に申し訳ない発言だけれど、翻訳というのは、ある意味で自分の作品のようなもので、翻訳者の表現の癖というのがあるのを忘れてはいけないと思う。例えば「源氏物語」はたくさんの新訳がある。古文はある意味で外国語のようなもので「源氏物語」ひとつとっても様々な表現や翻訳する人の感性が現れてくる。英語の文章を翻訳するのだって同じことが言えるのではないだろうか。
 もし「天使と悪魔」の文章を英文で読みきるだけの力のある人なら、別の世界が見えてくるものかも知れない。

ISBN:4047914576 単行本 越前 敏弥 角川書店 2003/10/31 ¥1,890
 ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」の前作(ロバート・ラングドン、シリーズの第1作にあたる)「天使と悪魔」を読んだ。
 個人の好みの問題だと思うけれど、わたしは「天使と悪魔」の方が好きだ。ダン・ブラウンの博学さに、ただただ圧倒された感じがする。作者個人には信仰心というものは感じられないのだが、信仰する者の心理をとても深く理解しているので、そういう点でも驚かされた。
 
ISBN:4047914568 単行本 越前 敏弥 角川書店 2003/10/31 ¥1,890

2006年1月8日 読書
 「恋」はひょんなことから手にすることになった。その経緯(いきさつ)は複雑なので、ここに記すことはやめる。その代わり、この本を読んで覚えておかなければいけない事を記そうと思う。
 小池真理子は「恋」で1996年に直木賞を受賞している。不思議なもので、わたし自身、小説というものを書くようになって常に、文章を綴る作家の心理というものを意識しながら本を読むようになった。そういう意味で、一番興味深かったのが、小池真理子の「文庫本のあとがきに代えて」である。

 その中の一部を抜粋したい。わたし自身のために。

 1994年12月の、風の強い寒い晩だった。何という理由もなく、私は寝室のベッドに仰向けになり、CDでバッハの「マタイ受難曲」を聴いていた。何故、その曲を選んだのか、よく覚えていない。受難、という言葉に自分自身を重ね合わせたつもりだったのかもしれない。
 その時である。何がきっかけだったのかわからない。それは突然襲いかかってきた嵐のように私の脳髄を突き抜けていった。ほぼ一瞬にして、あたかもドミノゲームのごとく、パタパタパタッと、見事なまでに完璧に物語の構想、テーマ、登場人物の造形が頭の中でまとまった。
 私は飛び起き、書きとめるものを探してあたりを見回した。ボールペンはあったが紙がなかった。狂女のように髪を振り乱して書斎に走った。
 レポート用紙を手に再び寝室に戻り、ベッドにうつ伏せになりながら、今しがた頭の中を駆け抜けていったものを走り書きした。レポート用紙十五、六枚は使ったと思う。力が入りすぎてボールペンの先が紙に穴を開けた。走り書きではない、殴り書きだった。
 神が降りた、とその時、思った。暗闇が薄れ、光が見えてきた。あとはその光に向かっていけばいいのだった。

ISBN:4101440166 文庫 小池 真理子 新潮社 2002/12 ¥740
 間違いなく、お薦めの本です。

 この本の帯をご覧になれば解る通り、もうすぐ映画が公開される予定(確か1月の21日だったと記憶している)で、一時期、熱狂的な小川洋子のファンだったわたしは、その情報から久しぶりに彼女の本を開いた。
 物語の設定は相変わらずエキセントリックなのだが、そこに一貫して流れていたのは静謐な、あまりに静謐な愛だった。初期の頃のどこか危うい不条理な世界(それすらも魅力的だったのだが)は全て消失して、どこか神々しい感じすらした。
「博士の愛した数式」が第一回本屋大賞に輝きベストセラーになったのも頷ける。先に映画を見て本を読まれると良いかも知れない。おそらく2時間では収まりきらないだろう。
 この本を読めば、少なくとも数学というものに対する認識は激変すること間違いありません。それも、自然に愛おしさが深まることでしょう。 

文庫 小川 洋子 新潮社 2005/11/26 ¥460
 あなたの子供は、あなたの子供ではない。

彼らは、人生そのものの息子であり、娘である。

彼らはあなたを通じてくるが、あなたからくるのではない。

彼らはあなたとともにいるが、あなたに屈しない。

あなたは、彼らに愛情を与えていいが、あなたの考えを与えてはいけない。

何となれば、彼らは彼ら自身の考えを持っているからだ。

あなたは、彼らのからだを家に入れてもいいが、

彼らの心をあなたの家に入れてはいけない。

何故なら、彼らの心は、あなたが訪ねてみることもできない

夢の中で訪ねてみることもできない、あしたの家に住んでいるからだ。

あなたは彼らのようになろうとしてもいいが、

彼らをあなたのようにしてはいけない。

何故なら、人生はあともどりもしなければ

昨日とともにためらいもしないからだ

※カリール・ジブランの詩集「預言者」の一節より 

 写真家であり、ナチュラリストであり、エッセイストでもあった星野道夫の著作物の中で、わたしは、ジブランの詩に初めて出会った。星野道夫の本はたくさん持っているので、どの本に書かれていたのか、小一時間ほど、調べてみたのだが、見つからなかった。

 この詩は星野道夫がひとり息子が誕生した時に喜びとともにジブランの詩を引用したことを覚えている。星野道夫はテレビの撮影旅行中に熊に襲われて命を絶った。息子の翔馬くんは、まだ2才だった。エッセイの中で彼は子どもの成長をとても楽しみにしてた。息子に伝えたいことは山のようにあっただろうと思う。

ジブランは敬虔なキリスト教信者だったが、星野道夫は宗教的な思いで「預言者」を開いたのでは、ないと思う。何故なら、わたしの知る限り彼は、スピリチュアルな人間で、すべての生命と呼応するように生きた。

 星野道夫という人物をわたしは亡くなった後で知ったけれど、年々彼への思いはつのるばかりで、時空を超えて人を愛することも可能なのだと初めて知った。いま手元にあるジブランの「預言者」原書と和訳の2冊、この詩集を手に入れる、きっかけも与えてくれた。

ISBN:4167515032 文庫 星野 道夫 文藝春秋 2002/05 ¥710

海辺のカフカ (下)

2005年12月23日 読書
 やはりある一種の漠然性が渦巻いて、どうしても芯を捉えきれない。それでも捉えきれない芯が確実にわたしの心をつかんで放さない。深く静かな、降り積もる澱のようなもの・・・その感触はなんだったのかと訊かれても、うまく言葉にできません。作中の登場人物がいうように・・・

「言葉で説明しても正しく伝わらないものは、まったく説明しないのがいちばんいい」

 この物語はみんなで声高に論じあうよりも、ひとりひとりの心の奥で養っていくのがいちばんあっているような気がします。

ISBN:4101001553 文庫 村上 春樹 新潮社 2005/02/28 ¥780
 アメリカの2005年度売り上げベスト10に「海辺のカフカ」がランクインしている。

 村上春樹の魅力とは何なのだろう?

 彼の作家としての才能は疑いようのないものだけど、何故か、ストーリーそのものに共感できない。いつも後味の悪い読後感が残る。それなのに魅かれてしまう。それがどういう意味を持って自分に迫って来るのか、悲しいことにその理由をつかめない。いつも、つかめないまま彼の言葉の海を漂流してしまう。

ISBN:4101001545 文庫 村上 春樹 新潮社 2005/02/28 ¥740

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